人が老いるということは、色々な能力、権利、財産あるいは家族、友人などの連続的喪失であり、若者と違ってこのような喪失体験が新しい創造につながりません。また、喪失に対する反応形態として妄想や鬱病という心的過程の異常だけでなく、脳の症状である諭妄を引き起こすのは他の年代にみられない特徴であります。私たちは、要介護高齢者に接するにあたり、医療、看護、介護以前に、連続的喪失環境への配慮と人間の尊厳を遵守することを忘れません。
私たちは、要介護高齢者と接するにあたり、心性や身体の特徴をふまえ、生活史を知り、更に現在の生活状況を分析することで、従来の要介護者と援助者の関係とは違った視点を得ることが出来ると考えています。それは、知識技術の方法論ではなく、何らかの治療や訓練という解決を求められていた視点を、角度を変えて要介護者の側からみる作業に切り替えるということです。こうした視点の切り替えにより、これまでとは違ったものが認識できると同時に、要介護者と私たちの間に共感が生まれます。この共感を得ることが私たちの専門的技術の第一歩と考えています。
援助に対する要介護者の満足度及び要介護者が援助者に援助を返す程度の評価が必要と考えています。要介護者に一方的に援助をするのではなく、要介護者から何らかの反応(例えば、介助したときにニコッと笑って頂く、握手をしたり、言葉を交わすなど、援助者と要介護者との間でコミュニケーションを持つ事)を得る事をいいます。相互性は安定した健全な関係には欠くことのできない特質であると思います。援助を返す能力がないと抑鬱や依存感情に襲われ、自尊感情の低下をきたします。さらに一方からだけの提供」は、援助者らのburn out (燃え尽き症候群)の原因にもなります。要介護者が相互性を発揮できるように援助する必要があると考えます。相互性を得る為には、専門的には、いろいろな知識、技術が必要です。特に認知症にたいしては、バリデーション、認知療法などいろいろな相互性獲得の為の治療やリハビリテーション、レクリエーションがあります。私共は、相互性を大事にして要介護者との関係、或いは要介護者同士の関係を築くことを大切にし、施設における穏やかな社会生活を目指します。
開設以来10年以上にわたり、データを蓄積。そこから導き出した根拠に基づき、利用者様の身体・認知症状の改善・緩和・悪化防止に効果的なケアを行います。
施設内の評価基準に基づいて把握した利用者様の課題を解決する為に、多職種(介護福祉士・看護師・PT・OT・介護支援専門員・栄養士・医師)が一体となり利用者様を支えます。
食事や着替えなどの際には、すべてをスタッフが行うのではなく、利用者様のその時の状態(病状や能力)に応じてご自身に可能な動作をしていただき、リハビリ要素やコミュニケーション要素を日常ケアに盛り込みます。